いろいろスゴかった!「生誕300年記念 若冲展」
2016 / 05 / 09
若沖展@東京都美術館。70分待ち、GW中に一度断念するも、再挑戦。
実は近くの国立西洋美術館のカラヴァッジョ展が大本命だったのですが、こちらは比較的あっさり入れました。 私自身は、カラヴァッジョはイタリアの美術史を代表する画家で、陰影のコントラスト、静物の艶やかさ、中性的な人物の醸し出すややセクシュアルな表情など、右に出る者はいないと思っています。また、「バッカス」「果物籠を持つ少年」「ナルキッソス」等の有名な絵も見られる他、「法悦のマグダラのマリア」の世界初公開など、見どころも満載なのですが…
この混雑状況の違いは何なのでしょう。汗。
いえ、伊藤若沖の絵もとても素晴らしいし、好きなんですけど…
伊藤若沖の絵の素晴らしさについては生半可な知識しかない私が語るべきでは無いとして、このGW中の集客の明暗を分けたのは、若沖展の並はずれたプロモーション戦略なんじゃないかって思うんです。
・「解説者」を生み出すメディア戦略
主催者にNHKが含まれていたこともあり、何度もテレビで特集されていた(そうです)。繰り返し放映されることで、美術に関心のある主婦を中心に、「若沖について詳しく語れる一般人」を多く生み出したのではないかと思います。今回の展示でも、若沖についてのうんちくを語るお母様方をたくさん見かけました。彼女たちが率先して、家族や友人を誘って来ていたように感じました。
・最新技術とのコラボレーション
エントランスでは、今年8月から導入される8Kハイビジョンでの作品紹介ムービーが流れていました。(5月8日までだったようです。)こちらもNHKが主催者であることに大きく関係すると思われるのですが、若沖の華やかで精密な絵と高精細のハイビジョンが非常にマッチしており、両者の良さを引き立て合っていました。このように作品にしっくりくる最新技術とのコラボレーションも、一つの成功要因だと思います。
・音声ガイドのキャスティング
並んでいる時に周りの方々の会話を聞いていて知ったのですが、「音声ガイドの声が誰の声なのか」で借りるか借りないかを決める方もおられるそうです。(私にはその発想は無かったので新たな発見でした。)若沖展の音声ガイドは、老若男女問わず好まれ、しかも時代劇でも活躍されている中谷美紀さんでした。花魁役をされていたイメージが強いからか、繊細かつ豪華なイメージも、中谷美紀さんにぴったりだと思いました。
・インパクトのあるポスター
ポスターの背景は目を引く赤です。赤い色はその色自体にインパクトがあるので、よっぽど主体が強くないと負けてしまいます。このポスターの主体は白い羽根の鳳凰ですが、この鳳凰のインパクトが凄まじいので、赤い背景でも良いバランスになっています。鳳凰の羽根の先の赤いハート模様が背景とのバランスを取っており、また、現代的に通じるセンスを感じさせることにも一役買っています。
・絶妙なキャッチコピー
「ひと月かぎりの、この世の楽園。」というキャッチコピーにも脱帽です。この短いセンテンスの中に、「一か月限定であること」「とてつもなく美しい世界が広がっていること」を盛り込んでしまい、さらに、色彩豊かな若沖の絵の世界を「楽園」の一言で言い切ってしまうセンスには、嫉妬さえ感じます。…いや、嫉妬しか感じません。(笑)
・ふんだんなマジックワード
「生誕300周年」「史上最大」「一か月限定」というこれでもか!というマジックワードを使える展示だったということも大きいと思います。羨ましすぎる!
そんな感じで若沖展、見どころ学びどころ満載ですので、まだの方はぜひ行ってみてください。 ええっと、カラヴァッジョ展も忘れずに…
「生誕300年記念 若冲展」
開催日程:2016/4/22(金)~5/24(火)
※5/10(火)から一部展示作品が入れ替わります。
会場:東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
開室時間:9:30~17:30
(ただし、金曜日は午後20時まで)入室は閉室の30分前まで
休館日:4/25(月)、5/9(月)
http://jakuchu2016.jp/
「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」
開催期間:2016年3月1日(火)~6月12日(日)
場所:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30~17:30(毎週金曜日 9:30~20:00)
http://caravaggio.jp/